<3月19日(火) 曇り>
この日はロンドンから国鉄で1時間ほど郊外にあるWindser Castleに行った。それまで地下鉄にしか乗ったことがなかった私たちは、わくわくしながらウィンザー方面行きの列車がでるPaddington駅へ向かった。
Paddington駅という以上、やっぱりありましたPaddington Bearのスタンド。
縫いぐるみや絵はがきなど、Paddington Bearグッズが山のように売っており、見とれていたら、列車を1本逃してしまった。それでも何とか次の列車に乗り込むと、列車は田園風景の中を駆け抜けていった。
1992年に火事でかなりの部分が焼け落ちてしまったWindser Castleであったが、修復中のところをのぞいて一般公開がされていた。石畳の道を歩き、高い城壁をくぐり抜け城内へと入る。日本の城郭建築も美しいが、やはりここはヨーロッパの城、堅固な作りをしているように感じた。中に展示してある歴代の王や女王への贈り物や彼ら自身が描いた絵、当時の様子を描いた絵画なども、かつて栄華を誇った大英帝国の名残を見ているようであった。
最も素晴らしかったのがQueen Mary's Dollhouse。実物の12分の1の寸法で家具や電気製品、書籍、絵画、食器やワインに至るまですべて精巧に作られていた。目の前にしてから1分間は声も出なかったほどである。
城内にある2つのチャペルも、ステンドグラスや壁画など、美しいものであったし、パイプオルガンの調整をしているところにでくわしたというのも貴重な体験であったが、何より驚いたのが、ガイドブックに1992年の火事のことが写真入りで載っていたことである。このような痛ましい出来事を忘れてはいけない、という決意を示されているような気がした。
Windser Castleの衛兵さんと
Paddington駅に戻ると、もうホテルまでは歩いて10分ほどだったが、そのまま私たちは映像博物館Museum of the Moving Image(MoMI)へと直行した。
ちょうど映画が誕生してから100年ということで大がかりな展示をやっているようであったし、何より私を引きつけたのはSesame Streetのキャラクター達であった。案内役はオスカー。映画の歴史、アニメーションの歴史、テレビの登場、ニュース映画やドキュメンタリー、映画スターの衣装や映画雑誌の変遷など、映像に関するさまざまなものが展示してあった。
映画館を模した一室では、世界の名画をダイジェストで紹介しており、私たちが入ったときにはちょうど黒沢明監督の「七人の侍」をやっていた。「ロンドンにまで来て『七人の侍』を見るとは思わなかったね」などといいながら見ていたのだが、次に出てきたのは「戦艦ポチョムキン」だった。ソ連の映画で、世界の映画史に残る傑作であることは分かっていたのだが、音楽と映像が異様なほど恐怖感をあおり立ててきて、しばらくその場を立ち上がることができなかった。今思い出しても背中に悪寒が走るほどである。
そんな怖いこともあったが、ビートルズのアニメ「イエロー・サブマリン」のセル画が展示してあったり、館内にあったテレビセンターをのぞいたらあるチャンネルで「魔法使いサリー」をやっていたり、映像全般に関する貴重な体験をすることができたと思う。外に出たら「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」で使われた自由の女神像が展示してあったのがまたおかしかった。
MoMIの入場料が少し高かったため、夕飯を節約しようということになって、帰りがけにホテルの近くのスーパーマーケットによった。とはいっても室内には湯沸かしポットぐらいしかないので、カップラーメンしか買えなかったのだが。
それにしても、ロンドンで(しかも日清の)カップラーメンが買えるとは思っていなかったので、見つけたときはたいへんびっくりした。カップラーメンの他にもお菓子やヨーグルト、ジュースなどを買って帰途についた。ホテルの部屋でカップラーメンをすすっていたら、なぜだか少しだけ日本の味が恋しくなった。
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